書き留めたいことを書き留めたいように

起業支援ネット×よのなか×わたし

書き留めておきたいこと(「君たちはどう生きるか」を観た話)

感想を書きたい。書かずにはいられない。でもどのSNSで呟いても、誰か(主にこれから見ようとする方)にご迷惑をかけてしまいそう。

思えばネタバレへっちゃら、作品によっては積極的に事前情報を仕入れにいくこともある(あれだけ事前情報なしで見た方がいいよ!と言われていた「怪物」も、事前情報なしでは見られる自信がなかったので、ストーリーを把握してから観賞した…)わたしだけれども、今回のスタジオジブリ最新作「君たちはどう生きるか」をほぼ事前情報なしに見られたのはとてもいい体験だった。

なので、SNSで誘導しない限り、限りなく人は読まないであろうこちらにひっそりと感想を書いておく(それもどうなのかとは思うが)。

 

「死に水をとる」覚悟で観に行った本作。まぁそれはあながち間違いではなかったような気がする。

なんていうか、高圧濃縮宮崎駿

あぁ、そうか、宮崎駿作品で何度も何度も繰り返し描いてきた、描かずにはいられなかったのはこういうことなんだなと。

ストーリーは途中からある意味破綻する。因果関係や展開として理解しようとするとできなくなる。でも、もう力技で押し切ってくる。ちゃんと押し切られるようにできている。そのまま受け取り身をゆだねていると、「だって世界はこうなっているんだもの」「だって世界はこうあってほしいんだもの」という切実さはビシビシと伝わってくる…。

 

悪意が混じっていない石の積み木は、もうほんのわずかしか残っていない。なんとか積み木のバランスを保ったとしても、それは1日しか持たない。それが「君にしかできないこと」と言われたら…。でも、すでに悪意を持ち嘘もつけてしまう自分自身がやるべきことは、悪意を知る人間として、それでも悪意のない石が世にはあることを知る人間として、石の欠片を握りしめて元の世界で生きること。

その先に、例えば悲しい別れが待っていたとしても、望みとは違う道が待っていたとしても、あなたと出会えたことは、この世界と出会えたことは、素敵なことだったということ。本当に自分は生まれてきてよかったんだろうか、この世に生きる意味があるんだろうか。そういう問いにこう答えてほしいと願う切実さ。

 

あぁ、最後にやっぱ塔は崩れるんだ…!と思ったら笑えてきて、でも笑いながら泣いてしまった。エンドロールの間中、どうして泣いているのかわからないけど、泣けてくるという感じだった。

 

今はもうここにいない人に言ってもらうことでしか受け取れない言葉がある。誰かを迎えに行くことは、自分自身に出会いなおすことでもあり、異世界での経験を通じてしか超えられないものがある。

 

観終わったあとにいろんな方のSNSでの感想を見て回ると、これまでの宮崎作品をイメージさせるシーンが数多くあることに触れている人も多い。一方、わたしは、マーニーとかアリエッティとかメアリと魔女の花とか若干エヴァンゲリオンとか、宮崎駿の影響を受けた別の監督の作品を想起した(エヴァはテレビ版しか見ていないので、あんまり確かなことは言えないんですけど…)。うまく言えないけど…なんか、それがめちゃくちゃぐっと来たんですよね…。一人で抱えていたはずのものが、誰かの抱えていたものと共鳴して、影響しあっている感じが…。

 

これが映画として素晴らしい作品なのかどうかは正直よくわからない(もちろん映像表現で素晴らしいと思うところはたくさんあった)。

すでにジブリや宮崎作品を、自分の経験や成長と切り離して評論できる人はそんなに多くはないような気がする。

わたしは観てよかったな。考察よりも、ただただ受け取ることで活きる作品だと思う。