書き留めたいことを書き留めたいように

起業支援ネット×よのなか×わたし

予定調和の外側に

岡山の年上の友人(…友人って呼んでも許してもらえますよね???)が発行している、いわゆるミニコミ誌が、先日、第1000号を迎えたそうです!

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書き始める雑誌 週刊ボチボチいこか

ブログ版もあります(雑誌版にしか載っていない記事もある)

→ http://blog.livedoor.jp/botiiko/

 

「不確かだけれど、生きる喜びと確実に結びついた、パーソナルな営みとしての<学び>を求めて」って痺れますよね。

 

15年以上前にこの雑誌のことを知ったにも関わらず、いまだにわたしは、これが「どういう雑誌なのか」を説明することができません(汗)。

発行人のTさんと、Tさんに縁のある方々が、ただ書く、結論を決めずに書く、書き始めてからの化学反応を楽しもうとする、というような感じで、テーマも多岐に渡るし、毎回、落としどころが一切ない、というのが見事に徹底されている雑誌です。

 

これを20年間、毎週発行し続けるということ。誰から頼まれたわけでも、強制されたわけでもなく。それはもう「業(ごう)」としかいいようがない、何かなのだと思います。そして、そういう何かに動かされている方のことを、わたしは本当に素敵だと思うのです。

 

Tさんとの出会いは、例の(笑)ISIS編集学校で、わたしが師範代を務める教室の生徒のお一人がTさんでした。

 

…いやもう、大変でした!!!

Tさんをはじめとして、この教室には知識のレベルも、思考のレベルも、社会的なご活躍のレベルも高い方が多く、30そこそこの小娘がまともに太刀打ちできる感じではなかったのです。鋭い質問やつっこみや、ときには「こんな課題には答えたくない」という反応や。雑談で交わされている言葉の意味や、出てくる人の名前がわからない。何が話されているのか、ついていけない。

…いや、よくやり切ったな、自分。あの時、最後までやりきったことだけは自分を褒めたい。

 

で、そんな編集学校をなんとか終えて(途中めちゃ省略)、校長である松岡正剛氏からプレゼントされた本がこちら。

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「魔女の1ダース」米原万里

ロシア語の同時通訳にして、エッセイストとしても活躍された米原万里さん。この本、どれも面白いんですけど、めちゃくちゃ印象に残っているのが、第10章の「遠いほど近くなる」。

 最近、旧ソ連が崩壊して形成された新独立諸国の官僚や企業家が市場経済の原理とノウハウを学ぶため、日本政府や国際金融機関などの主催する研修に参加することが多くなった。その通訳に動員されて気づいた面白いことがある。

 英語がある程度できて、市場経済の基礎をかじった人々(これは多くの場合若手)と並んで、旧体制の中央集権的な計画経済の中でかなり高位の役職を占め、一方で市場経済的手法については無知に近いという中高年者が参加することがある。もちろん英語はできない。

 彼らは飲み込みが悪く、いちいち講師の言葉につっかかり、他の優等生や講師をウンザリさせる。最初の三日間ぐらいは、授業の足を引っ張る劣等生という風に見られて煙たがられている。

 ところがしばらくすると、彼らがいることで授業により深みと奥行きが出てきていることに気づき出す。彼らの発する質問は根源的であり、哲学的でさえある。優等生たちは、自分たちの捉え方がいかに上っ面だけを撫ぜたものであるか思い知らされて恥じ入り、講師は講師で今まで自分が疑問にも思わなかった問題を突きつけられて、学問的にも新鮮な刺激を受けるのだ。

あぁ、わたしが経験したのはこういうことだったのかもしれない、と、すとんと来ました。”腑に落ちた”っていう言葉を、体感として経験したのは、思い出す限り初めてだったかもしれない。

 

この経験が、わたしにもたらしてくれたもの。

必死でもがいてなんだかよくわからないけれど指南を返し続けた日々と、この本の文章が組み合わさって、何か「学びの場」を持つときのわたし自身の基本的なカマエが醸成されたように思っています。

それは、

◆「思ったようにいかないときは、何かが新しく起こっている」ということ。

◆「発見や創造や学びは思ったような範囲でコトが進んでいるときは起こらない」ということ。

◆上ふたつの事柄も、本当かどうかはわからないけれど、一旦そういうことにしておいて物事を見てみるということ。

もちろん、今でも、上手くいかなくて、「はっ、あのカマエを忘れているではないか!!」と思うときもありますが、それでも寄って立つ場所、戻る場所ができた。

 

…というわけで、Tさんは大恩人なわけです。15年以上経った今も、こうしてご縁をいただけていることも、まったくの想定外の出来事。

 Tさん、ありがとうございます!そして、ボチいこ1000号、本当におめでとうございます。いつか、また、ぜひ一献。

 

あ、最後にもう一つ。

このときに松岡校長からもらった言葉は、いまでも支援者としての自分のどこかに影響を与えています。

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編集術を学ぼうと思って編集学校に入ったときは、支援者としての自分の何かが得られるとは全く思っていなかった。 これも、想定外。でも、大事なことって、大体がそんなものじゃないかな、とも思う。